社会参加への最初の一歩

自身の現状を改善するために社会参加に向けて一歩進んで行動し、日中の活動の場として就労継続支援事業所※1で作業に取り組むことで、工賃※2を得られている方もいらっしゃいます。
※1障害福祉サービス受給者証をお持ちの方のみ利用可能。障害福祉サービス受給者証の詳しい取得方法はこちらを参照ください。
※2工賃についての詳しい説明はこちらを参照ください。
事業所の作業やスタッフのサポートを通して、生活リズムの改善や働くために必要な知識やスキルの習得、コミュニケーション能力の向上などの目標に向けた活動に取り組まれ、自分のペースで徐々に就労に向けたステップアップをされている方がいらっしゃいます。

従来の支援体制における問題点

一方、様々な要因が重なることで事業所へ通うこと自体が困難になっていかれる方も少なくありません。「事業所での人間関係やコミュニケーションに対する抵抗感」、「季節や気圧の変化における体調の波」、「通所にかかる距離や時間」、「サービス利用の時間帯が生活リズムに合わない」等、それぞれ様々な障害や特性を抱えているため、通所が困難になる要因はこれらに限らず多岐にわたります。
また、事業所への通所が安定せず、「このままではいけない、なんとかしなければ」という焦る気持ちがありながらも、欠席が続いてしまい、自責の念に駆られている方がいらっしゃるということも忘れてはいけない問題です。
もとより、そのような方々に画一的な作業時間と作業内容は負担が大きく、根本的な問題の解決にはつながらないのではないでしょうか。
障害や、特性は千差万別であるのにもかかわらず、一律の福祉サービスの支援では網の目からこぼれてしまう人が出てくるのは当然で、そのような方々の本当の力を引き出すことができないという問題も生じてきます。

ユネスコジャパンから新たな社会参加の提案

私たちは、ひきこもりや様々な障害や特性をお持ちの方に社会参加の入り口として、地域清掃活動を提案しています。以下が、清掃活動の優れている点です。
 ・特別なスキルや経験がなくても、誰でも参加できます。
 ・体調や気分に合わせて、活動時間や頻度を調整できます。
 ・活動前後の変化が目に見えて分かるので、達成感を得やすいです。
 ・身近な地域の環境保全と地域活性化としての社会貢献ができます。
 ・無理なく自分のペースで他者との関りを持つことができます。

小さな一歩から大きな飛躍へ

ここでは社会参加の一歩としてユネスコジャパンの地域清掃活動に参加され、順調にステップアップされている方の事例をご紹介します。

【事例1】Tさん(35歳・7年間のひきこもり経験者)

大学卒業後、一般企業に就職したものの、過酷な労働環境と人間関係のストレスから体調を崩し、退職。その後7年間、自宅でのひきこもり生活を送っていました。
ユネスコジャパンの地域清掃活動を知ったTさんは、まずは週1回、自宅周辺の公園の清掃から活動を開始。徐々に行動範囲と頻度を広げ、半年後には週3回の活動に参加するようになりました。
1年後には他の参加者との合同清掃活動にも参加するようになり、現在は新規参加者のメンター的役割も担っています。「最初は人と話すことさえ怖かったけれど、一緒に汗を流す中で自然と会話できるようになった。同じ境遇の参加者からアドバイスを求められたとき、ひきこもり経験者ならではの共感や助言ができ、感謝されたことも良い経験だった」とTさんは語ります。
また、活動を支援する企業でのインターンシップを経験し、現在はその企業の環境事業部で週3回のパートタイム勤務を始めています。「社会復帰は不可能だと思っていたけれど、小さな一歩を踏み出せる場所があったことが大きかった」と振り返ります。

【事例2】Mさん(28歳・発達障害)

発達障害の特性から、騒がしい環境や急な予定変更に対応することが難しく、一般就労や就労継続支援事業所での継続した活動が困難だったMさん。
地域清掃活動では、自分のペースで取り組める点に安心感を覚え、活動を開始。特に、「目に見えて地域がきれいになる」という明確な成果が得られることにやりがいを感じているそうです。
当初は週1回、1時間程度の活動でしたが、現在は週4日、朝2時間の活動を続けています。「毎日同じ時間に外に出る習慣がつき、生活リズムが整った」とMさんは話します。
また、活動を通じて地域住民との交流も生まれ、「ありがとう」と声をかけられることが大きな励みになっているとのこと。現在は、清掃活動で集めた落ち葉を使った堆肥づくりにも挑戦し、地域の学校の環境教育プログラムに協力しています。

共に歩む社会へ

それぞれ自身のペースを大切にしながら、まずはユネスコジャパンの活動に参加してみませんか?従来の就労継続支援事業所のように決まった時間、決まった場所で働き続ける必要はありません。
清掃や除草が可能な公共の場であれば、いつでもどこでも誰でも地域社会に貢献することができます。ここで重要なのは、ひきこもり当事者や、障害を抱えている当事者は、決して「支援される側」という立場ではないということです。あなたもこの生きづらい現代社会を支える、そして変えることができる大切な一員なのです。
慣れないうちは恥ずかしさや不安で周りの目が気になることも多いかと思います。しかし、少しずつでも自分の手できれいになっていく地域の様子や、「きれいにしてくれてありがとう」という感謝の言葉がけが、達成感や自信につながっていくことを実感できるはずです。

人口減少と高齢化が進む日本社会において、一人ひとりの多様な能力や可能性活かすことは、社会の持続可能性を高める上でも重要な課題です。地域清掃活動を通じた社会参加支援の取り組みは、そうした課題に対する一つの具体的な解決策となりえます。
私たちユネスコジャパンは、この取り組みに賛同し、共に歩んでくださる企業や団体、個人の皆様を求めています。あなたの支援が、多くの方々の人生に新たな可能性をもたらします。一人ひとりが輝ける社会の実現に向けて、ぜひ私たちと共に一歩を踏み出していただければ幸いです。